仕事、学校、趣味……
あなたは「何かを途中でやめる」ことを、悪いことだと思っていませんか?
あるいはそういう風にサッと次へ行ってしまう人を、
「辛抱がない」と心の中で非難していませんか?
先日「あきらめの悪い人 切り替えの上手い人」という本を読みました。
私は挫折の経験から「諦める」ってことについて寛容的なほうだと思っていましたが、この本を読んで、世界がひっくり返ったような衝撃を受けました。
うつや発達障害でなにか「できないことがある」人。
ずっとなにかに執着して生きてきた人。
そんな人にぜひ読んでほしいので、私が感じたことを書いていきます。
「あきらめの悪い人 切り替えの上手い人」下園壮太 著
私は「マルチタスクができない」という特性から挫折を経験し
「普通」っていうものを諦めてゆるい生活をしているので、
「絶対こうじゃなければ」ってこだわりが “今は” ないほうだと思います。
だからふだんから
「日本の、社畜にならざるを得ない風潮どうにかなんないの!?高度経済成長あたりの価値観をいつまで引きずってんだよ終身雇用の時代でもないのに」
ぐらいには思ってました。(これは過去の自分にも向けてます)
ではなぜ「あきらめの悪い人 切り替えの上手い人」を読んでみようと思ったかというと、
やはりウダウダと迷ってしまう、未練たらたらな時があったからです。
「仕事」については出来ないことが何度も見えてくるうちに「無理しない」「こだわらない」「自分の『得意』に目を向ける」というのが出来てきましたが、
趣味とか日常のあらゆることから、そうやって逃げてていいのか!?という葛藤があって。
それで「諦める」ことについて正当性が欲しいなと思い、手に取りました。
日本人の諦め下手は、原始人の頃から刷り込まれている!?
この本によれば日本人は国民性として「諦めるのを嫌う」そうですが、
その風潮は原始人の頃に培われたものだと言います。
狩猟民族である西洋人と、農耕民族である日本人の違い。
日本人は「協力して生活を営んできた」ということ。長い時間をかけてコツコツ農作物を育てる作業において途中で投げ出す奴は、そのコミュニティーにおいて煙たがられる存在になる。
私はこの説を読んだときめちゃくちゃ感激しました。
今日の風潮が形作られたのは、社会の仕組みづくりが今とほとんど大差ないであろう現代、せいぜい近代あたりの話なのだろうとなんとなく思っていたのですが。
そうではなくて、日本人というものが始まった頃に植え付けられた価値観だとしたら。
そりゃあ、簡単には覆せないよなーって。
DNAに刻まれてるんだもん。
ここで私は、ADHDがよくかつての狩猟民族に捉えられるのを思い出しました。
時代によって求められる職業がどうこう……というより、
そもそも農耕民族の中に放り込まれてうまく行くわけはないんですよね。
そうなるとADHDは大陸からの血なのかしら、それとも遺伝子の突然変異?なんて。話が逸れてしまったので戻すとして……
つまりは社畜根性も戦争によって訓練されたものでもなくて、
もっとず〜っと昔から、色濃く残っているものってことですね。
そういえば日本人って「がんばる」のが美徳だと思ってるよね
「頑張り続ける」ってことを考えたとき、
私は日本で広く流行したものを思い出しました。
たとえば91年に発売された大事MANブラザーズバンドの楽曲「それが大事」。
負けない事・投げ出さない事・逃げ出さない事・信じ抜く事
「それが大事」大事MANブラザーズバンド
駄目になりそうな時
それが一番大事
全編にわたって「逃げないでものごとと向き合い続けよう」というメッセージを
明るい曲調で訴えてきます。
最近この曲を8組28名のアーティストが替え歌でテレワーク合唱し、
話題にもなりました。
累計160万枚のセールスを記録しており
今なお愛される楽曲で、
「もう無理、と諦めそうになった時」に勇気づけられた人も多いのではと思います。
あとは某マラソンで必ず流れるZARDの「負けないで」もそうですね。
坂井泉水さんの優しい歌声が、聴く人の心を勇気づけます。
楽曲ではなくても有名なスラムダンクのセリフ、ありますね。
諦めたらそこで試合終了だよ
「SLAM DUNK」第8巻145ページ
安西先生のセリフです。
日常でも「物事を続けることの大切さ」を語るときに、
必ずと言っていいほど話題に出されやすい名言です。
また、松岡修造さんの動画「諦めんなよ!!」という熱い言葉には、
私もよく元気を貰いました。
日めくりカレンダーがヒットしたことも記憶に新しいですね。
これらが支持される、広く皆が求めるということから
「頑張り続けたい」「諦めないでやり遂げたい」と思ってる人がそれだけ多いことがわかります。
西洋でそういった楽曲などが支持されるのか、されないのかはわかりませんが
少なくとも日本人は、こういうの大好きってことですね。
諦める=ネガティブな行動かと思ってたらポジティブと表裏一体だった
私がこの本の存在を知ったときは
諦めというのは結局のところネガティブなものだと認識しており、
どう落としどころを見つけていけばいいかその方法が知りたい、という理由で読み始めました。
しかしこの本は、
「あきらめ」そのものを「ポジティブな行動」として意識改革ができる内容となっています。
例えば私に関して言えば。
生まれ持った特性的にミスが多く作業も遅いので
転職活動をする際、履歴書を手書きするのがうまく行きません。
書き損じを繰り返し、完成まで3時間ほどかかることもあります。
それが嫌で履歴書作成を先延ばしにしてしまったりね……。
そもそも手書きの履歴書自体、日本的な「頑張り」を見せるための道具ですよね。
内容さえわかればいいのに、いまだに「手書きじゃないと心が感じられない」とかアホかという。
というわけで割り切って、「印刷が受け入れられない会社なんぞこちらから願い下げじゃい」という気持ちで全部印刷にしてから気が楽になりました。
それでダメなら精神論で物事を通そうとする会社だし、それが理由で書類選考を落とされるならこっちも楽だし。
受かるところは普通に受かりますからね。
つまりは「自分のフィールドはここじゃないんだな」と別の道を探すこと。
これ自体が「あきらめ」の行動だったんだなと。
「逃げ」じゃなくて「方向転換」として捉えれば、それがポジティブなものとして考えられるようになるんですね。(作中ではもっと深く突っ込んでます)
もちろん、著者の方も「なんでもすぐ手応えがなかったら諦めろ」って言ってるわけではないんです。
ただ「今まで頑張ってきたから……私はこの道しかないんだ……」とこだわってしまい非効率なことをずっと続けてしまうよりだったら、
早く見切りをつけて次のことにチャレンジしてみましょう、ということですね。
著者の方は心理カウンセラーだから「うつ」の言及について説得力がある
作中には「諦めないこと」と「うつ」の関連性について書かれた項目があるのですが
著者の下園さんは陸上自衛隊心理カウンセラーとして、現場でカウンセリングを行った経験がおありとのことです。
そのため、これは「うつ」について机上の空論ではない、
実際にこういう理屈でうつは改善していくだろうな。というようなことが書かれています。(もちろん私自身専門家ではないので確実ではないですが)
私は、自分の「諦めること」について答えを導き出すために読み始めましたが
これは「うつ」で現在苦しんでいる人、あるいは発達障害などの何らかの理由で
「できない」ことが今ある人に読んでもらいたいと強く感じました。
うつも仕事とか生活とか「できない」の連続だからねぇ。
もちろん投薬や休養など適切な治療も必要ですが
前述した通り「あきらめ→ポジティブな捉え方」で私が衝撃を受けたように、
この本を読み「考え方をちょっと変化させる」だけで
今ある不安感がちょっとでも拭えるんでは。と思いますのでおすすめです。
「諦め下手」な日本人が
高度経済成長期に比べて現代でうつになりやすい理由も、めちゃくちゃ納得した!!
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DNAレベルでの諦め下手さんが、行動できるようになるには
個人的な話をさせてください。
私はかつてネットビジネスの会社に勤めていましたが、
定時の業務とは別に2000文字のブログ一本+ツイート10本の投稿を毎日のノルマとして課せられていました。
中途覚醒の症状が出たり通勤時に涙が出てきたり、たしかに「しんどい」のに
辞めるって決断がなかなか出来ずにいたんですよね。
これは「途中で諦める」ことで上司を失望させるのと、
自分自身のプライドが傷つけられるのが嫌、って思いだったんです。
でもよく考えたら、部下が「つらい」って訴えてるのに
「試用期間で結果を出すためだからノルマは変えられない」って上司はクソだし、
私自身そもそもそこには合ってなくて身体が悲鳴を上げてたんだから、
無理してそこにいつづける必要なんてなかった。
私は心療内科で「抑うつ状態」と診断されたのをお守りにして「辞めます」って切り出しましたけど、
あのまま「諦めない」で続けていたら……間違いなくうつ病に進行していたと思います。
DNAに抗って諦めを手にするためには、「知ること」だ
「心身が悲鳴を上げててつらいのにそのまま頑張り続けてしまう」というのは、
私の経験に限らず、よく聞く話だと思います。
何故かというと諦めないのは、ある意味「楽」なんですよね。
これは「ホメオスタシス」という生命の機能によるものと個人的に考えます。
野生動物よろしく、新たな行動をするのは外敵が襲ってくることもあるでしょう。「怖い」し「苦痛」が伴うこともあります。
そもそも生命の機能的に新しいことをするのが苦手……さらに日本人は諦め下手な国民性。
諦めないのは、現状の延長線上で物事が動いていくことを指します。
となればまだ安心な「諦めない」って選択をするのも理解できますよね。
ただそれも「いつまで経っても成果が出ない……」といった苦痛が伴うこともある。
しかもそれで悩んでいる人は私の体感でもけして少なくない。
現状のまま人と比べて苦しんでいるよりだったら、行動を起こしてみない?
じゃあどうやったら行動しやすくなる?いつまでもウダウダすることなく次のことに切り替えられる?
ってのが、この本の主題です。
ネガティブな諦めへの言い訳の本かと思ってたら、
私の大好きな「選択」「決断」の本やないかーい!
「100人の村」の話が面白かった
私が興味深いと思ったのは、原始人のプログラムのお話。
これを読んだとき、
私は恐れ多くもUVERworldのTAKUYA∞さんを
「自分に大きく影響を与える100人」の中に入れてるな、って気づいたんです。
TAKUYA∞さんは非常にストイックで
毎日10kmのランニングを欠かさず、ライブ終わりでそのまま走りに行くような人物。
ライブのMCや歌詞で繰り返し
「諦めず努力を続けていった結果、夢は叶う」という熱いメッセージを届けています。
今でこそ私自身年齢を重ねて落ち着いてきて
一歩離れて見られるようにはなってきましたが、
昔はその言葉を素直に受け取って、勉強とかめちゃくちゃ頑張ってたなぁ。
……とまあ、こういう風に
自分の心を奮い立たすための良い影響を受けてるうちは別に良いんですが
悪い影響を受けることもあるってのが、この100人の村の問題点。
私もあのまま頑張り続けていたら、
「成功できないのは、まだまだ努力が足りないからだ……TAKUYA∞さんのようにもっと頑張らなきゃ」と苦しくなっていたかもしれません。
私がTwitterのTL上で見かけるフォロワーさんのツイートでも、
TLや身近な同年代という「村」の中で、自責する内容のツイートをよく見ます。
楽器が弾けるのに「自分には何もない」って嘆いていたり……(私は何も弾けません!私からすればそれもうすごいよ)
病気して誰よりも心優しく、繊細に物事を感じ取る姿はその人の良さでもあるのに、「周りの同年代は社会で活躍していて、一方で何もできない自分に焦る」と苦しんでいたり……(私はそんな優しいあなたが好きだから、今はのんびりと療養していつか笑える日が来てほしいよ!)
受け取れる情報が多すぎて、
自分の良さを感じ取れるセンサーが鈍くなってしまうんだな。
本ではその「100人の村」の理論を詳しく説明したうえ、
じゃあ、どうやったらその村からの刺激(比べなくてもいいものを見て凹んだり、自分の努力ではどうしようもないことを頑張ろうとして疲れてしまったり)を減らすことができるのか、ということが述べられています。
ここもほんと、
自分を責めがちな人には有効だと思う〜!
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最後に「それが大事」のアンサーソングを紹介する
前述した諦めないソングの代名詞「それが大事」について調べていたときに、
アンサーソングがリリースされていることを知りました。
本に直接関係するわけではありませんが、
この本のテーマに非常に沿っていると感じたので、紹介しておきますね。
負けてもいい投げ出してもいい
「神様は手を抜かない 」大事マンブラザーズ 立川俊之
信じ抜けないこともあるだろう
泣いてもいい逃げ出してもいい
全力で自分を擁護しろ!
余談だけど「神様」というキーワードが、
偶然「あきらめの悪い人 切り替えの上手い人」の本の中で言及している
「神様」「守護霊」のくだりにぴったりでちょっと感動……!
単なる「逃げろ」という歌じゃなくて
「逃げ出さないことが大事」って散々歌ってきた曲が元々あって
そのアンサーソングとなっている、というのがストーリー性を感じて素敵ですね。
しくじり先生に出演した際「それが大事」ばかりを歌い続けて
「何が大事がわからなくなった」というしくじりを披露していました。
その過去から得た答え「投げ出してもいい」なので
非常に深い曲だと思っています。
この本を読んで「諦める」ことの勇気を手にした暁には、
是非メインテーマとして口ずさみましょう。
私も何が大事かわからなくなったときには口ずさむことにします!
まとめ
「あきらめ」は必ずしも悪じゃない。
そういったことを精神論じゃなく心から理解していって、
むしろ「諦めきれずダラダラ続けてしまう時間がもったいない」ぐらいに意識がかわる本でした。
前述した通り、なんでも早々に諦めろってことはなくて
効率を考えてスパッと気持ちを切り替えられる強さを持て、ということです。
いま現在うつなどメンタル面の疾患を持っている人は
今すぐ「決断をする」ってことは難しい(というかやめたほうがいい)ですが、
そもそも「頑張りすぎて心を壊してしまった人」だと思うので、この本の考え方を学んでおくのは非常に有効かと。
あなたは頑張り屋さんだから、きっと理想の自分があるんだろうけど。
諦めを手にしてみたら、肩の荷が下りるかもよ?
私は本を読む前から「仕事をバリバリできる自分」を諦めてました!笑
いや、諦めるもなにも頑張ったところできっと叶わなかったんだけど、
「頑張るのをやめる」だけで非常に気が楽になりました。
「あきらめの悪い人 切り替えの上手い人」を読んでからは
仕事だけに限らない、様々な執着を無くしていこうと思えています。
ほどほどに、頑張れればいいよね!
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